保証債務の履行について、説明してください。

<解答>
 相続税においては、一定の要件を満たすことが可能であれば債務控除をすることが可能になって(相続税法基本通達14−3)、一定の要件を満たすことができれば、所得税においても譲渡収入金額がなかったものとみなされることになります(所得税法64(2))。

[ポイント]
(1) 保証債務については原則的には債務控除が不可能になっております。
(2) 相続開始時に主たる債務者が資力を喪失等してしまって弁済不能の状況に陥ってしまい、保証人がその債務を履行しなければならず、かつ、求償権の行使が不可能になってしまったときは、債務控除が可能になります。
(3) 保証債務の意義(民法447条)。
(4) 保証債務の目的のために不動産を売却した場合において、求償権の行使が不可能になってしまった場合の金額は譲渡収入金額がなかったものとみなされるようです。

<解説>
(1) 保証債務とは
 保証債務については、「保証人については、債権者との間で主たる債務者がその債務を履行できない場合においては、それを履行する責任を負う」ということになるようです。つまり、もっぱら主たる債務を担保することを目的として存在するものになるようです。

(2) 保証債務の履行に当てはまるケース 
 保証債務の履行に当てはまるケースとしましては、主なものとしまして以下のようなものが存在しているようです。
(一) 保証人、連帯保証人としまして債務を弁済したケース。
(二) 身元保証人としまして、債務を弁済したケース。
(三) 他人の債務を保証する目的のため、抵当権などの設定を行った人がその債務を弁済したり、抵当権などを実行されたケース。
(四) 連帯債務者としまして、他の連帯債務者の債務を弁済したケース。

(3) 実務上の留意点
(一) 相続税
 原則としまして、保証債務につきましては、相続税の課税価格の計算上において、債務控除に対象にはならないことになります。しかし、相続開始時において、主たる債務者が資力を喪失する等の原因で、弁済が不可能な状態になってしまうため、その債務を保証人が履行する必要がある場合で、かつ、主たる債務者に求償したとしても、返済を受けられる見込みがない場合におきましては、債務として、その部分の金額に限りまして控除することが可能になるようです。(相続税法基本通達14−3)。したがいまして、質問のケースにおきましては友人の弁済が不能な状態にあって、友人に求償したとしても返済される見込みがない場合につきましては、債務の控除をすることが可能になるようです。
(二) 所得税
 保証債務の履行の目的のために、不動産を売却した場合であったとしましても、原則としまして、所得税が課税されることになるようです。しかし、保証債務を履行する木定期のために資産を譲渡した場合におきましても、その履行に伴う求償権の全部、あるいは一部を行使することが不可能になってしまった場合におきましては、その行使することが不可能になってしまった金額については、譲渡所得の金額の計算上、譲渡収入金額はなかったものとみなされることになります。(所得税法64(二))この場合については、保証債務を相続税の課税価格の計算上において、被相続人の債務としまして控除した場合であったとしても適用されることになるようです(所得税法基本通達64−5の3)。したがいまして質問のケースにおいて、上記の要件を満たすことができれば譲渡所得税は発生しないことになります。
(三) 贈与税関係
 債務の肩代わりをもらった人につきましては、債務の免除による利益を受けたものとしまして、原則としまして贈与税が課税されることになります。しかし、債務者が資力喪失の状態で債務を弁済することが難しい場合におきまして、債務の免除を受けられた場合においては、贈与税が課税されることはないようです。(相続税法8、相続税法基本通達8−1、8−3、8−4)。

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遺言書と異なる分割をした場合について、説明してください。

<解答>
 原則、遺言にしたがい、分割するのが一般的になるようですが、相続人及び受遺者が、その遺言を放棄し、全員の同意によりまして分割することになるようですから、贈与税等の課税関係はないと考えられます。

<解説>
(1) 民法上の取り扱い
 相続財産には権利だけではなく義務も含まれることになるため、遺言の自由が原則となります。つ、相続を拒否する自由を認められなければなることはなく、民法では遺言を放棄することが明確に認められているようです(民法986条(一))。
 遺言と異なっている遺産分割を行った場合におきまして、相続人及び受遺者が一旦包括遺贈の放棄を行いまして、未分割状態に、その財産を戻した上で分割協議をしたものと考えられます。
 民法において、相続の開始があったことを知ったときから3ヶ月以内に、相続人については放棄の手続き(家庭裁判所に申述)をしなければならないと考えられているようです(民法915条(二))が、包括受遺者につきましても、この規定が準用されることになるようです(コンメンタールp6053 包括遺贈)。

(2) 実務上の取り扱い
 実務上においては、分割を遺言書とは異なっている内容で、希望する事例はかなり多くなっております。また、民法上においては、上記のように放棄の手続きをとらなければならないと考えられますが、実務上は「事実上の放棄」という点に注目し、上記のような放棄の手続きをする必要がないこともあるようです。遺言書の内容がどのようなものであったとしても、相続人および受遺者全員の同意によって分割されることになるわけですから、その遺産分割は有効に成立することになり、贈与税の問題は起こらないと考えられております。

(3) 受遺者に相続人以外の者がいた場合
 受遺者に対して、相続人以外の人がいた場合におきまして、その相続人以外の人を加えまして、分割した場合はどうなるのでしょうか?
 これについては、一旦財産を、相続人が取得しまして、その中から相続人以外の人に対して贈与したこととなり、贈与税が課税されることになります。遺言と異なる割合、手法によって、法定相続人以外の者に財産を配分する場合においては注意しなければならない。

(4) 遺言執行者が存在している場合
 遺産執行者につきましては、相続財産の完治その他遺言の執行につきまして必要な一切の行為を行う権利・義務を有している(民法1012条、1013条)ので、遺言執行者の同意を得られなかった場合については、遺言と異なる分割は不可能になるようです。
 このような事態を避ける目的のためにも、遺言執行者は、原則相続人とするのがよいと考えられます。

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預金の払い戻しと配偶者の税額軽減について、説明してください。

<解答>
 実際には、払い戻しを受けているので、「分割された財産」としまして「配偶者の税額軽減」の適用が存在しているようです(平成12.6.30裁決より)。

<解説>
(1) 法定の取り扱い
 遺産については、遺言や遺産分割によりまして、関係者や相続人に分配されるのが原則となるようです。ただし、預金などの可分債権においては、分割されていなかったとしても相続人が法定相続分に応じまして取得する権利が存在しております。つまり、分割を行っていなかったとしても取得する権利があるため、分割の対象から除かれるということになります。この考え方については昭和29.4.8、昭和34.6.19の最高裁判所の判決によるものになっているようです。
 しかし、家庭裁判所の遺産分割審判においては、上記の最高裁判決を踏まえた上で、可分債権も遺産分割の対象になる取り扱いが定着していることになりますので、判断は分かれることになる。
 つまり、預金などの可分債権については、最高裁判所におきましては遺産分割の対象とはなりませんが、家庭裁判所の遺産分割審判におきましては遺産分割の対象になるといえます。

(2) 配偶者の税額軽減の取り扱い
 配偶者の税額軽減(相続税法19条の2)は、「分割されてはいない財産」には適用されることはないようです。では、分割されていない預金につきましては、配偶者の税額軽減の対象にはなるのでしょうか?
 (1)にありますように可分債権につきましては、最高裁判所と家庭裁判所で取り扱いが異なることになります。そのため、可分債権であることを理由に、この預金が「分割されていない財産」が除かれるとされることには無理があるといえます。
 しかし、本問の場合においては、分割は行われてはいないようですが、配偶者については実際に法定相続分の預金の払い戻しを受けております。配偶者については払い戻しを受けたことによりまして、その預金の払い戻しを受けています。配偶者については、払い戻しを受けたことによって、その預金の実質的な支配者になります。ですから「分割された財産」と同じ効力を持つことになります。そのため、この預金については「分割されていない財産」から除かれることになりまして、分割された財産としまして配偶者の税額軽減の適用を受けることが可能になるでしょう。

 次に配偶者の税額軽減の適用時期を考えてみることにしましょう。申告期限前に払い戻しを受けた場合におきましては、通常どおり配偶者の税額軽減を適用しまして、相続税の申告を行うことになります。申告期限後に払い戻しを受けた場合につきましては、払い戻しを受けた日から4ヶ月以内に行う更正の請求によって、配偶者の税額軽減を適用することになりまして、税額を取り戻すことが可能になるでしょう。ただし、申告期限から3年を経過した日以後におきましては、配偶者の税額軽減の適用自体がなくなることになるため、注意が必要にります(訴訟があった場合などは除かれることになります。)。

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