<解答>
実際には、払い戻しを受けているので、「分割された財産」としまして「配偶者の税額軽減」の適用が存在しているようです(平成12.6.30裁決より)。
<解説>
(1) 法定の取り扱い
遺産については、遺言や遺産分割によりまして、関係者や相続人に分配されるのが原則となるようです。ただし、預金などの可分債権においては、分割されていなかったとしても相続人が法定相続分に応じまして取得する権利が存在しております。つまり、分割を行っていなかったとしても取得する権利があるため、分割の対象から除かれるということになります。この考え方については昭和29.4.8、昭和34.6.19の最高裁判所の判決によるものになっているようです。
しかし、家庭裁判所の遺産分割審判においては、上記の最高裁判決を踏まえた上で、可分債権も遺産分割の対象になる取り扱いが定着していることになりますので、判断は分かれることになる。
つまり、預金などの可分債権については、最高裁判所におきましては遺産分割の対象とはなりませんが、家庭裁判所の遺産分割審判におきましては遺産分割の対象になるといえます。
(2) 配偶者の税額軽減の取り扱い
配偶者の税額軽減(相続税法19条の2)は、「分割されてはいない財産」には適用されることはないようです。では、分割されていない預金につきましては、配偶者の税額軽減の対象にはなるのでしょうか?
(1)にありますように可分債権につきましては、最高裁判所と家庭裁判所で取り扱いが異なることになります。そのため、可分債権であることを理由に、この預金が「分割されていない財産」が除かれるとされることには無理があるといえます。
しかし、本問の場合においては、分割は行われてはいないようですが、配偶者については実際に法定相続分の預金の払い戻しを受けております。配偶者については払い戻しを受けたことによりまして、その預金の払い戻しを受けています。配偶者については、払い戻しを受けたことによって、その預金の実質的な支配者になります。ですから「分割された財産」と同じ効力を持つことになります。そのため、この預金については「分割されていない財産」から除かれることになりまして、分割された財産としまして配偶者の税額軽減の適用を受けることが可能になるでしょう。
次に配偶者の税額軽減の適用時期を考えてみることにしましょう。申告期限前に払い戻しを受けた場合におきましては、通常どおり配偶者の税額軽減を適用しまして、相続税の申告を行うことになります。申告期限後に払い戻しを受けた場合につきましては、払い戻しを受けた日から4ヶ月以内に行う更正の請求によって、配偶者の税額軽減を適用することになりまして、税額を取り戻すことが可能になるでしょう。ただし、申告期限から3年を経過した日以後におきましては、配偶者の税額軽減の適用自体がなくなることになるため、注意が必要にります(訴訟があった場合などは除かれることになります。)。